駄サイクル

先日読んだ「ネムルバカ」は、どこか未成熟で身につまされたりもする人間関係の描き方が見事で、読後も色々ひきずる部分が多いのだけど、中でも「駄サイクル」に関する下りで色々と考えさせられている。

これは作中で明確に定義がなされているもので、曰く「自称アーティストが何人か集まって、同士で『見る→ホメる→作る→ホメられる』を繰り返している、需要と供給が輪の中で成立しちゃっているもの」。作中では、キザでナルシストでしかもそれが全てスベっている仲崎というフリーターと、彼が思慕するなんちゃってアートギャラリー兼レストラン及びその店長に対して、主人公の一人入巣柚美が「サムいサムい」と布団に倒れこむ様子を通して、それが描かれている。

特に「需要と供給が輪の中で成立しちゃっている」というところに着目すると、広義にて駄サイクルと言える世界は大小問わずこの世のかなりの割合を占めており、これ深く突き詰めていくと非常に面白い定義でもあるのだけど、もしそうであっても健全な人格形成や日常生活の潤いとして機能するのであれば、別に「駄」でもなんでもない。逆に「駄」と唾棄されるのは、その構造の不健全さゆえ。その健全か不健全かの境界って、やはり『見る→ホメる→作る→ホメられる』のサイクルでもって批評を成立させず、あまつさえそれで人から金まで取ったりあげたり、すなわちお金のサイクルも交えてしまうところだろう。これがさらに不健全という感覚を鈍くする。

また、定義では駄サイクルは送り手だけで完結するかのようになってるが、現実的には送り手だけで成立するものではない。エゴだけはいっぱしに強い送り手がお互いの作品を付き合いでまともに鑑賞し続けていられるほどの寛容さを持っているわけがないから。批判することのない「良き理解者」な受け手を取り込むことで、錯覚の自信が芽生え、初めて堕落が回り始める。その受け手となりうる人種も、ある程度相場が決まってる。マイナー嗜好な人。文化に対して興味は強くても良し悪しの鑑識眼がない人。自分の居場所が中々見つけられない人。献身的な志向のある人。気が優しい人(イコール「優しい人」「良い人」ではない)…そんなところだろう。

そういう世界は、確かにそこらにあちこち転がっている。特にライブハウス界隈なんか、そういう温床になりやすいところはあるね。通常のブッキングだと、ライブハウス側からの厳しい介入もあるのでそうはなりにくいのだけど、逆に特定ジャンルの企画モノは駄サイクルの巣窟になってるものが目につきやすい。これ以上具体的に書きたくはないんだけどさ。同人関係も、例えばかの平野耕太の「大同人物語」の冒頭で出てくる学校の漫画研究会もまさに駄サイクルと呼べるもので、ああいうのもまあ少なくないだろうねと。

しかも恐ろしいのは、そういう世界というのは受け手側の人間にも、「やりがい」意識が自然と植え付けられていくこと。クソみたいなCDでも聴くに耐えないライブでも「バンドをサポートするために買わなきゃ行かなきゃ」とか。そう、これは怪しげな政治団体オルグに丁度近いものがあるし、実際行き着く先は本当にそれと寸分違わないのだ。

振り返ると、かつての僕もまさにそれだった。そういう世界の醜さを漫画という形で見せ付けられると、非常に重々しい気分になる。駄サイクルは駄サイクルなりの崇高さがあるんだよ!!と叫びたい気持ちもある。しかし、いずれにしても…この世界で生きるのに有益なものにはなりえないのは確か。世間との感覚もどんどん剥離してくるし、人付き合いも内向的になるし、やがて人間性もどんどん荒んでくる。もっと早く気付いておくべきだったんだよなぁ…。

思うに、作者の石黒正数って芸大出身ということもあり、これに対する危惧が人一倍大きいのではないだろうか。明確かつ骨太な輪郭でもって読み手にはっきりと物事を伝えることに腐心する彼の作風を見ると、そんな気がしてならない。こういうシビアで黒い奴をまた描いて欲しいなぁ。やっぱり「それ町」は作者の持ち味が素直に出てるものじゃないと思うんで。

-

ところで、駄サイクルに関してblogを検索して気になったのは、アマチュアリズム=駄サイクルと誤解してるげな人をちらほら見かけること。なんか「やるならプロにならなくちゃいけないんだ!」みたいな(笑)。アマチュア風情であることをわきまえた活動をも駄サイクル扱いしたら、モノを作る趣味は全て唾棄すべきものになってしまうよ。また、オタク界隈とか同人界隈とかも全体で見るなら駄サイクルの対極にあるような世界でしょ。こんな受け手の欲求本位な世界他にないって(笑)。

「駄サイクル」の定義を正確に理解するためには、やはり漫画の方を読み逃しなくちゃんと読んで欲しい。石黒正数も近所のおばちゃんのカラオケ同好会を否定するような、そんな性格の悪い主張してるわけじゃないので。特に仲崎のあの気持ち悪〜いキャラクターとセットで考えないと、これ中々理解しにくいと思う。

-

新しい自転車を買うため、お店探してます。うちの地元は全然ないのですよ〜。ホームセンターみたいなところとか、そんなんばっかり。やはり伊勢崎まで出る必要があるのか…うーん。

-

DMC映画、カミュ役が誰なのか一番注目してたら…ロバートの秋山かよ…。このキャスティングだけで、なんかロクな出来でなさそうな予感が…。あと、ちゃんとデスメタルになってるデスメタル使えよと。青春パンクをデスメタルと称したらタダじゃおかんよ。

-

黒蜴蝶は本当に格好いい。またこの時期のメロディックスピードメタル熱が上がりそう。洋楽はBLIND GUARDIANとSCANNERとCHROMING ROSEあたりかな。国内だと、GARGOYLEとSALAMANDERとAIONとROSENFELDは押さえてるけど、あと他に何かあるだろうか…。X標榜系も新しいバンドになるとナンチャッテさ加減が増大するんだよなぁ…。唯一期待してたGALEONは潰れちゃったみたいだし…あれこそ黒蜴蝶系の超期待の新星だったのに!!